この記事では、犬におけるノミとマダニの寄生リスクや、それに伴う病気、さらには予防の最適な期間について、現役獣医師が詳しく解説しています。
ノミやマダニは、皮膚の痒みやさまざまな感染症の原因となり、犬の健康を脅かす存在です。しかし、正しい知識と予防対策を実践すれば、これらのリスクは大きく軽減できます。この記事を読むことで、ノミとマダニの生態や予防のタイミング、適切な対処法についてしっかりと理解することができます。
ぜひ最後までご覧いただき、愛犬を守るための参考にしてください。
ノミとマダニの犬への寄生
まずはノミとマダニ、それぞれの生態と犬への影響について見ていきましょう。
ノミとは
ノミは節足動物門昆虫綱ノミ目に属する寄生昆虫で、日本全国に分布しています。成虫は犬などの恒温動物の皮膚表面に寄生し、吸血によって生活します。
犬に寄生するノミにはイヌノミとネコノミの2種類がありますが、実際に犬に寄生しているノミの92%以上はネコノミです。ノミは宿主の呼気に含まれる二酸化炭素を感知して寄生先を見つけ、運動能力も高く、体長の60倍の距離や100倍の高さを跳躍できると言われています。
犬に寄生すると、わずか5分で吸血を始め、24時間以内には産卵を開始します。卵から成虫になるまでのライフサイクルは約21日間と非常に短く、爆発的な繁殖が可能です。
ノミが引き起こす主な病気は以下の2つです:
- ノミ刺症:刺された部位に限局した痒みや発赤、赤い発疹がみられる。
- ノミアレルギー性皮膚炎(FAD):ノミの唾液に対するアレルギー反応により、全身に強い痒みや皮膚炎が起こる。

マダニとは
マダニはダニ類の中でも大型で、吸血前は3〜4mmほど、吸血後は1cm程度まで膨れ上がります。昆虫ではなくクモやサソリの仲間に分類され、屋内に発生するチリダニなどとは異なります。
草むらなどに潜んで、哺乳類の呼気や体温、振動などを感知し、宿主に飛び乗って皮膚に噛み付き吸血します。吸血は長時間にわたり、6〜10日間も続くことがあります。
マダニが媒介する主な病気は以下の通りです:
- バベシア症:赤血球を破壊する原虫性疾患。重症化すると命に関わる。
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS):人獣共通感染症で、犬から人に感染する事例も報告されています。

ノミとマダニの予防期間は?
ノミやマダニは気温13度以上で活発に活動します。したがって、予防の開始と終了は地域の気温を目安に決めるのが基本です。
- 予防の開始:気温が13度を超え始めた時期(主に4月頃)
- 予防の終了:気温が13度を下回る時期(主に11月頃)
ただし、予防期間は地域差があります。
- 北海道や東北地方:4月〜10月
- 関東〜関西:3月〜11月
- 九州や沖縄:通年予防が推奨される場合もあります
近年では温暖化の影響で活動期間が長くなってきているため、動物病院で地域ごとのアドバイスを受けることが重要です。
ノミとマダニの予防方法について
近年では、フィラリア予防とノミ・マダニ予防が一体化された便利な製品も登場しています。
スポットタイプ(皮膚に垂らすタイプ)
- フィプロニル:フロントライン、フィプロスポット、マイフリーガードなど
- イミダクロプリド:フォートレオン、アドボケート(フィラリア予防も可)
経口タイプ(錠剤タイプ)
- フルララネル:ブラベクト(長期間持続)
- アフォキソラネル:ネクスガード、ネクスガードスペクトラ(フィラリア予防も可)
- スピノサド:コンフォティス、パノラミス(フィラリア予防も可)
それぞれに特徴があるため、犬の年齢や体質、ライフスタイルに合わせて選択することが推奨されます。

まとめ
ノミやマダニの寄生は、皮膚病や重篤な感染症の原因になるため、予防が何よりも重要です。特にノミアレルギー性皮膚炎やバベシア症、SFTSなどは深刻な症状を引き起こすこともあります。
予防期間は気温に応じて柔軟に設定し、愛犬の健康を守るために、継続的な予防管理を徹底しましょう。迷った時には、かかりつけの獣医師に相談するのが安心です。